エロ童話 一 「キッス」
「ちょっと風邪を引いたみたいなの。あなたからさきに蜜を吸ってくださる?」
「僕は、いま、あいにくお腹がいっぱいなんだ。それより君、夏の風邪は、栄養をつけるのが一番なんだよ。この、/忘れられた森/ の蜜はとびきり甘いんだよ。さあ、吸ってみてごらん。」
「まああなた、この森の蜜が飛び切り甘いなんてこと、どうして知っているの?わたしは、ずっと昔からこの森に住んでいて、ほかの森の蜜の味なんて知らないのよ。」
「僕は、去年の夏にこの森に引越してきたからね。いろんな森を旅してさ。この森で君と出会って・・・。そうそう、君はワルツを唄っていたね。クルクル回りながら・・・。急に君のスカートを引っぱっちゃってごめん。僕は、君の足がダイスキになっちゃったから・・・。なにしろ、ここは /忘れられた森/ で・・・。」
「/忘れられた森/の中でだったら、なにをやってもいいというワケ?でも・・・・・ダイスキってコトバ、初めて耳にしたの。とってもキモチのいいコトバだわ。」
「ナカヨクスルってコトバもいいものだよ。」
「ナカヨクスルって?」
「そうだね、ええと、ダイスキととっても似たコトなんだけど・・・。じゃあさあ、君と僕、いっしょに蜜を吸ってみよう。いいかい、せーの! で吸うんだよ。」
「わかったわ。」
「せーの!」
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やがて、/忘れられた森/ の蜜蜂たちも眠るころ、
・・・・・・
夜が明ける。
まだまだ眠くはないけど。
わたしたち、ずっとなんの話をしていたの?
コトバは途切れることもなく、もう笑うのにも疲れたわ。
ふたりで森へいこう。
ねえ、早く、
手をつないで・・・。
(03.12.29)